を問う連続企画

靖国>を問う連続企画Vol.1
追悼と参拝ーー靖国8・15+10・17をどうみるか
主催 <靖国>を問う連続企画実行委員会
(yasukuni-renzokukikaku@hotmail.co.jp)

日時 2005年 11月20日(日)13:00〜
場所 京都大学文学部新館第一講義室

内容
・8月15日行動のビデオ上映
靖国8・15事件被逮捕者からの報告
・菱木政晴さんの講演(小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団事務局長)

菱木政晴さん:宗教学者真宗大谷派僧侶。現在同朋大学教員。著書に「浄土真宗の戦争責任」「解放の宗教へ」「非戦と仏教ーー『批判原理としての浄土』からの問い」共著に「国立追悼施設を考える」など。

10月17日午前、小泉首相は就任以来5度目の靖国神社への参拝をおこないました(翌日朝には超党派の国会議員でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバー101人、代理を含めると計195人が集団で参拝しました)。9月30日に「小泉靖国参拝違憲アジア訴訟」(注1)の大阪高裁判決で、小泉首相の参拝は憲法20条(政教分離)に違反する行為という判断が出されたにもかかわらずで
す。
この判決に対し、小泉首相は、「なぜ憲法違反なのかわからない、私は憲法違反だと思わない」(大阪高裁判決に対する談話)と発言していました。この訴訟じたいに対しても、「話にならんね。世の中おかしい人たちがいるもんだ」(2001.11.1新聞報道)と発言していました(注2)。それでもこの判決に配慮したのでしょうか、今回の参拝は、平服で記帳せず本殿には上がらないなど、「私的」なものであることを強調したものでした。また、マスメディアでは、参拝に反対する人は中国か韓国にしかいないかのように、中国・韓国など外交関係に悪影響という報道ばかりがなされました。小泉首相も参拝した17日の夕方、記者団に「本来、心の問題に他人が干渉すべきじゃない。ましてや外国政府が、日本人が日本人の戦没者に、あるいは世界の戦没者に哀悼の誠をささげるのを、いけないとか言う問題じゃない」と発言しました。

しかし、小泉首相が参拝した〈靖国〉の問題は、「公的か私的か」や、中国や韓国との外交関係のみにあるのでしょうか。

今年8月15日には、政府閣僚・国会議員47名や石原都知事らは、戦没皇軍兵士へ「哀悼」の意を表するため、軍国主義を掲げる右翼が数多く集う靖国神社への参拝をおこないました。この日正午の靖国での「黙祷」に対する抗議をおこなおうとした人々が、待ち構えていた警視庁機動隊に暴力的に包囲・圧迫され、4人が「公務執行妨害」を理由に逮捕されるという事件が起きました(注3)。翌日の新聞では、逮捕された人たちは「過激派」「極左」であるという警察発表そのままの報道がなされました。

毎年この日靖国周辺は、まるで右翼と機動隊に制圧されているような状態になり、抗議の声を挙げようとする人々に対する機動隊や右翼による集団暴行がくりかえされ、これまで何人もの負傷者も出ています。しかし、マスメディアではそのような報道はほとんどなされません。8月15日の事件の報道のように、〈靖国〉に抗議の声をあげる人々を警察やマスメディアが「過激派」「極左」と呼ぶことは、警察の過剰な権力行使と右翼の暴力を押し隠すこととセットになっています。

私たちは、このような〈靖国〉をめぐる状況を、いくつかの視点から批判的に問うていこうと考えています。今回は8月15日の不当逮捕された当事者からのお話と事件当日のビデオ上映、そして小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団事務局長の菱木政晴さんからは、違憲訴訟で提起された政教分離や判決では無視された靖国神社に合祀された台湾原住民をはじめ遺族の想いなど、靖国神社の問題性と論点のレクチャーをしていただきます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

主催 <靖国>を問う連続企画実行委員会
連絡先 yasukuni-renzokukikaku@hotmail.co.jp

注1) 2001年8月13日におこなわれた小泉首相靖国神社参拝に対して、その違憲性の確認と参拝による人権侵害に対する損害賠償、さらに将来にわたる参拝の差し止めを求めて、同年11月1日に大阪・松山・福岡の各地裁に提訴。その後提訴されたものを含め、全国6地裁7件で小泉首相靖国参拝が問われた。大阪訴訟が特に「アジア訴訟」と呼ばれるのは、日本人だけではなく、在日、在韓の百数十名の韓国人や「日本臣民」とされ「皇軍兵士」として戦死させられた人の遺族が原告となっていることと、
日本の犯した侵略戦争十五年戦争アジア諸国の人たちに与えた惨禍について、国や首相に真摯な反省を求めるための訴訟であるなどの理由から。一審では敗訴したが、二審高裁判決では、判決理由の中で、小泉首相の参拝を政教分離に反する憲法違反という判断が出された。また、大阪では、台湾出身者124名を含む236人が、国・小泉首相靖国神社に対して一人1万円の損害賠償請求を求める訴訟が提訴され、第二次大阪─「台湾訴訟」と呼ばれる。判決は、憲法判断もせず、公用車を使い秘書官を同行し、公約である靖国参拝を実行した行為を、「私的領域である」との判断を示した。台湾原告団が初めて参加したこの訴訟では、靖国神社と台湾植民地支配との関係が問われた。

注2) 小泉首相のこの発言に対しても、違憲訴訟原告の社会的評価を著しく低下させ名誉を傷つけるものとして訴訟が起こされた。2003年9月26日大阪地裁判決は、訴え自体は棄却したものの、判決理由の中で、小泉首相のこの発言が不適切なものであることを認めた。そして、原告の証言を引用しながら、「原告らの感情を害するものであることは理解でき、しかも、本件発言が日本全国に報道されることを前提したものであることからすると、内閣総理大臣という公的な立場にある者の発言としては配慮
に欠ける」と実質的に原告の主張を認め、小泉首相に対する厳しい警告を示した。

注3) 警察はこの日、「黙祷」に抗議するため地下鉄で移動しようとした人々に対して、地下鉄改札口を50名を越える警察官で封鎖し彼らを地上に出れないようにした。そのため、抗議行動参加者はやむなく別の改札口から地上へと出たが、そこでも盾とヘルメットに身を固めた機動隊員らが歩道を封鎖し、参加者のみならず一般の通行人すら歩道を歩けないという事態となった。
警察は、この「予防検束」にも等しい手法で抗議行動参加者らの移動の自由を制限したうえ、抗議の声を上げた人々に鉄板入りの拳やジェラルミンの盾、鉄板入り乱闘靴で襲いかかり、殴る蹴る、路上へとなぎ倒す、という暴行を加え手当たり次第に4名もの人々を逮捕した(8月26日に全員釈放)。
さらに後日、4名の被逮捕者の家などに現行犯逮捕であるにもかかわらず家宅捜査が行われ、うち1件では捜査員が捜査令状も警察手帳も見せずに被逮捕者の自宅になだれこみ、捜査への立会いを要求する住民の手足をつかんで排除するという憲法刑事訴訟法を無視した家宅捜査が行われるなど一貫した暴力が公然と行使された。