農業研修生は現代版債務奴隷

農村の労働力不足を補う目的で、劣悪・違法な労働条件で一万人以上の海外からの研修生を酷使することが公然と行われている。日本の農業・農村問題と移住労働者の搾取が密接にリンクしている事実を改めて認識させられる。研修生は多額の借金をして保障金を預ける上、研修先に逆らえば、研修停止になり本国に送り返され、膨大な借金だけ残る可能性がある。そのような強制力のもと現代版債務奴隷として働かせられていることに対して何も云わないで、研修生を使っている農業法人は成功しているとかいっている一部の農業経済学者は腐っているとつくづく思う。
そもそも日本の農家は家族労働力を中心に、収穫期のとき他の農家の女性をパートタイマーとして雇ってきた。パートタイマーの女性は同じ農村コミュニティーの一員として働きに来てもらうため、食事を用意したりする等非常に配慮して雇用しなければならなかった。農村女性労働力の高齢化による枯渇と政府の農業法人の経営拡大振興によって、農村外から来て、権利をもたない海外からの研修生を超低賃金、過酷なサービス残業を押し付け、3k労働力して利用しようとする流れが加速している。家族労働力で補える以上の農業経営の拡大は必ず農村労働力問題を引き起こすのは必然であり、政府の農業経営拡大政策の批判とそのような無権利状態の研修生とどのように連帯するかが課題である。

 サパタ

朝日新聞 http://www.asahi.com/national/update/1112/SEB200911120005.html
中国人研修生と休日めぐりトラブルか 熊本3人殺傷事件2009年11月12日15時3分
 熊本県植木町の農家で夫婦ら3人が殺傷された事件で、熊本県警は12日、中国から農業研修に来ていた王宝泉研修生(22)が広地宏一さん(67)と妻の富子さん(63)ら3人を殺傷した後、首をつって自殺したとの見方を固め、王研修生が住んでいた、広地さん方近くのプレハブ小屋を殺人などの容疑で家宅捜索を始めた。

 また、広地さんと王研修生との間では、休日をめぐる意見の違いがあったことが、研修生を仲介した団体「有明里麗協同組合」代表理事の男性(46)への取材でわかった。熊本県警も事実を把握し、休日をめぐってトラブルとなり事件につながった可能性もあるとみて慎重に調べている。

 代表理事によると、事件当日の8日午後2時ごろ、広地さんから「王研修生が午前中は姿を現したが、午後から来ない」との電話があり、代表理事は「行かせます」と答えた。代表理事の中国人妻が王研修生に電話し「無断欠勤はよくない。なんで行かないの」と尋ねると、王研修生は「広地さんの奥さん(富子さん)から休みをもらった」と答えたという。

 代表理事によると、8日は王研修生と同様に同組合を介して来日し、働いている親族の実習生の誕生日で、王研修生は誕生日会に参加したがっていたという。代表理事が同日午後、「夫婦で指示を一本にしてください」と広地さん夫婦に伝えようと広地さん方を訪ねたところ、首をつっている王研修生を見つけ、広地さんらが倒れていたという。


中国人研修生 立てこもり 音更 十勝毎日新聞 http://www.tokachi.co.jp/news/200907/20090712-0002029.php 
2009年07月12日 13時53分
包丁所持、受け入れ牧場で
 【音更】12日午前6時ごろ、音更町豊田東8線、牧場経営葛巻信也さん(42)=同町雄飛が丘=の葛巻牧場で、農業を学んでいた中国人の男2人が包丁などを手に、寝泊まりしていた牧場内のプレハブに立てこもって「中国領事館を呼べ」などと要求。牧場関係者が近くの交番に通報、駆けつけた帯広署員らが説得に当たり、約1時間後に投降した2人を暴力行為法違反(集団的脅迫)の疑いで現行犯逮捕した。
中国人研修生が逮捕された牧場。研修生2人は左側の白色のプレハブ小屋に約1時間立てこもった(12日午前7時35分ごろ)
暴力行為法違反容疑 1時間後に投降逮捕
 逮捕されたのは、いずれも中国人の農業研修生、焦渭南=ショウ・イナン=(28)と李彭ショウ=リ・ホウショウ=(20)の両容疑者。

 逮捕容疑は、12日午前5時50分ごろから同7時5分ごろまでの間、葛巻農場内の両容疑者が住むプレハブで、葛巻さんに対し、包丁を示し、ガソリンのような液体をまきながら、「中国の領事館を呼べ。労働検査署を呼べ」などと中国語で要求し、葛巻さんを脅迫した疑い。同署で、詳しい経緯や動機を調べている。

 署員約30人が現場に急行、音更消防署も消防車など車両3台を出動させて警戒。駆けつけた警察官や牧場関係者が、プレハブの外から両容疑者に話し掛け、包丁などの危険物をプレハブの窓越しに出させた後、2人を取り押さえた。

 同牧場は肉牛を生産していて、両容疑者は農業技術を学んでいたとみられる。同牧場では、2人の勤務態度が悪く、派遣元に対応を求めていたという。

 関係者によると、両容疑者は今春ごろから同牧場で研修を始め、研修に対する金銭をたびたび求めていたらしい。

 十勝管内では今年3月、帯広市広野町の肉牛生産会社の牛舎で、共に中国人の農業研修生が農業実習生の腹をナイフで刺してけがを負わせる事件が起きている。



中国人研修生の成功確率は3割 「違法残業」も覚悟 朝日新聞
http://www.asahi.com/business/update/0718/TKY200907180200.html
農業や製造業などさまざまな現場で、外国人研修・技能実習生の「労働力」は欠かせなくなっている。だが、最低賃金が守られなかったり、違法な残業を求められたりなど問題もあり、夢を実現して帰国する人は多くはないといわれる。全国に約20万人いるとされる研修・実習生の7〜8割は中国人だ。彼らはどのようにして日本にやってくるのか。採用面接のため中国を訪れた東日本の農家のグループに同行した。
中国東北部・大連市近郊のビルの一室。野菜や果物を栽培する農家の男性7人が、20〜30代の中国人女性6人と向き合った。男性たちの前の簡素なテーブルには、女性の履歴書が並ぶ。
「大連に来て服飾工場で働いています。月収は1200元(1元は約14円)。実家は四川省です」。緊張気味に背筋を伸ばして座る20代の女性が、通訳を介してそう話すと、農家の一人が質問した。「地震があったね」

 「はい、大変でした」。そう答える彼女の履歴書に、男性は二重丸をつけた。

 面接後、男性に理由を聞くと「家が壊れたんだよね。それなら一生懸命働くよねえ」。つらくても3年間働き通す動機があるかどうかが重要だという。人手不足が深刻な農家にとって、研修・実習生は欠かせない。「いまいる研修生との相性も考慮するよ」

 20代後半で子どもがいない女性には「3年間日本に行くと、子どもを持つのが遅くなるけど、大丈夫か」との質問が飛んだ。

 必ず出た質問は「待遇は知っているか」。ある女性が「基本は月6万円。残業もあると聞いています」と答えると、すかさず農家の男性が「研修生は『残業』と言ってはだめ。『お手伝い』と言ってください」。
実は報酬には問題がある。「お手伝い」とは残業のことだ。技術の取得を本来の目的にする1年目の研修生には、制度上は禁止されている。だが、農家にとっても研修生にとっても、残業は暗黙の了解事項。違法なだけに、あからさまには口にしにくいのだ。

 今回参加した農家の「お手伝い」は時給300円。月2万円稼ぐにも、70時間近く残業しなくてはならない。

 面接は5、6人ずつ、1組に約30分。50人を面接した後、農家が気に入った半数を再び呼び入れて「2次面接」が始まった。全員を立たせたまま、農家の7人は「早い者勝ち。おれはあの気の強そうな子にする」「残りものには福があると言うぞ」などと日本語でやりとりし、それぞれ採用する人を決めた。約40分で計17人が合格した。

 面接を準備したのは、中国側の民間の送り出し機関だ。希望者を募り、合格者の訪日前研修もする。毎年約300人を日本に送り出している。

 合格者は手数料や保証金など約5万元を送り出し機関に払い込む。多くが借金だ。それでもなぜ、研修・実習生になろうとするのか。

 食品工場に勤める女性(29)は2次面接で泣きそうだった。農民の夫との間にいる長男(2)の教育費を稼ぐために応募したが、なかなか採用が決まらない。最後に指名されて、「残業でも何でもする。子どものために頑張る」と目を赤くした。

 大連市近郊で小さな雑貨店を営む尹長雪(イン・チャンシュエ)さん(30)は、04年から3年間、研修・実習生として茨城県の農家で働いた。来日前は縫製工場に勤務し、月収は約300元。夫はガラス工場で働いたが、子どもを抱えて生活は苦しかった。「とにかく生活を変えたい」と日本へ。つらい農作業に耐えて300万円ためた。借金を返し、店を開き、いまは年1万〜2万元の収入がある。「7歳の娘を大学まで行かせられる。日本に行ってよかった」と振り返る。

 だが尹さんのような成功例はそう多くはない。大連市の送り出し機関によると、来日前より生活レベルを上げることができるのは、3割程度にすぎないという。(編集委員・大久保真紀)