「派兵チェック」がおもしろい(成瀬)

一年くらい前から「派兵チェック」を、仲良くしてもらっている古本屋さんで取り寄せてもらって読んでいるが、とても面白い。
【派兵チェックウェブサイト:http://www.hahei-check.net/docs/modules/news/
戦争や基地の問題に取り組んでいくにあたって、倫理的な問いかけはとっても大事なことだと思うけど、実態に即した議論ができるようになるってこともとっても大事なことだ。こうしたことはとりわけ街頭とかでビラを撒いている時に問われる。確実な事実をもとにおしたくって(あるいはおしたくられて)いくこともしないで、考え方が違う、と自己を少数派規定するのは逃げだ。
反基地や反軍の議論をしているとき、解釈問題で争うというより、事実をほとんど共有していないことが多い。今の日本は一体いくら軍事費に費やしていて、いかなる質の装備を持つのか?中国、韓国、北朝鮮、ロシア、アメリカ、安保の話がでるときに、いつもでてくる他の国は?
まず事実を共有して、それからその位置づけを巡って議論をすることができるなら、意見が違っても、まだ納得がいく。派兵チェックを通じて得ることができる情報は、「なんで話が通じないんだろー」というモヤモヤ感を街頭や教室なんかで抱く人にお勧めだ。<話はずれるが、街頭でビラを撒いていると僕のような割と若い男は議論をふっかけられることは稀だ。たいてい背の小さい女子がおっさんにふっかけられている気がする。これ、なんとかならないのか。気持ち悪いのだ。>
第162号である今月号ではアメリ国防省のQDR(四年ごとの国防政策見直し)の読解(木下茅)、ミサイル防衛の日米共同実験中止を求める声明(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン呼びかけ)、2006年度軍事予算を読む(上)(山本英夫)が面白かった。
【QDRについては本文中でも参照されているが、浅井基文さんのウェブサイトも参照:http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/file131.htm
原文はこちらからどうぞhttp://www.comw.org/qdr/
天野恵一「運動メディアの中から」太田昌国「<表現>を食らう!!」の連載も興味深い。巻末の「自衛隊・米軍・軍事問題チェック日誌」は学習資料として有用だ。
なんでこんな話を書くかというと、最初に書いたように、いろいろな場面で「考え方の違う人」と話をしていくためでもあるけど、ある課題に取り組んでいる人が、他の運動と積極的に連帯していこうと思うときに、思想と実証という二つの方法が重要なのだけど、最近の運動界隈には思想っぽいものが比重多すぎないか、と思っているからでもある。
一ヶ月300円。これは惜しくないなーと思える「派兵チェック」だ。個人で定期購読をすると、送料がかかってしまうけど(年間購読料4000円)。日本のメディアは事実の収集能力は高いけど、分析がない、といったのはウォルフレンだったろうか?派兵チェックは豊富な蓄積に基づいた分析があるから面白い。とはいえ、「誤り」だってある。今月号4ページでは、辺野古新基地に関して、変形案を名護市長は「妥協案」としたがっているが、政府は容認しないだろうという見通しが示されているが、現実の展開はこれと違うことになった。どうして執筆者は「容認しない」と考えたのか。つっこんだ記述を待ちたい。
最新号12ページで編集部山本英夫さんは「オタクと云われようが」軍事費の質を検討しなくてはいけない、と書いているが、彼らが「オタク」、と云われなき(?)批判を受けるという「犠牲」を払い続けていることに答えてみてもいいんでわないだろうか。
反戦反政府界隈で、「インパクション」巻末の方にある、「運動のメディア読者会」みたいなんやりたいね。
(※編集部山本英夫さんは、「殺し屋1」「ホムンクルス」の作者とは別人物です。)