アメリカ大統領予備選挙からの一コマ

 ジョン・マケイン氏は、オバマ氏のイラク政策に対する批判を、民主党のアプローチが「非論理的である」として強めてきた。この論争は、もし二人がそれぞれの党の代表となった際に戦われる選挙戦を先取りしているかのようだ。マケイン氏は、昨日ヒューストンでの演説で、オバマ氏が、イラクにおけるアメリカの利権を守るという妥当な戦略は採用しているにも拘わらず、ブッシュ政権によるイラクでの誤りにばかり焦点をあてていると不満を述べた。「それは歴史、それは過ぎ去ったことだ。("That's history, that's the past,")我々が議論するべきは、今、なにをなすべきか、ということだ」。二人の上院議員は先週火曜日の民主党ディベートで、アメリカが撤退後、アルカイダが根拠地をそこで形成しようとしているとすれば、再び侵攻することもありうるとオバマ氏が発言して以来、イラクに関する応酬をしてきた。マケイン氏はオバマ発言をあざけって、アルカイダとよばれるグループがすでにイラクで設立されていることを指摘した。オバマ氏は、自分が反対した介入である、2003年のアメリカの侵攻までずっと、イラクにはアルカイダはいなかった、と宣言して応じた。
 また、マケイン氏は先月の「イラクに100年は米軍が駐留しなければならないだろう」という自分の発言がねじ曲げられているとしたうえで、それは戦後の駐留(a postwar troops presence)に関する言及だったのだ、と主張した。「韓国、日本、ドイツ、クウェートや、その他の場所、トルコなどにおける私達の(軍事的)プレゼンスに反対するアメリカ人は存在しない。なぜならば、我々が犠牲をこうむっていないからだ。」とマケイン氏は述べる。「一般的にいって、中国の台頭を考えた場合には特にアジアにおいて、アメリカの存在のおかげで、われわれはより安定した世界を享受できていると考える。しかし、そのための鍵となるのが、アメリカ人の犠牲、アメリカの最もすばらしい財産、そう、アメリカ人の血なのである」。
 昨日のオースティンでのキャンペーンで、オバマ氏は民主党のライバルであるヒラリー氏をほとんど無視して、マケイン氏をブッシュ大統領の経済政策を支持する点で批判した。「我々は、人知を越える力の故に経済危機に瀕しているのではない。またこの事態は不可避の経済循環の一部なのではない。これは、ワシントンにおけるリーダーシップの失敗なのだ。ワシントンで、ブッシュはごく少数の富裕層のために、八年間の長きにわたって、数十億ドルの減税をおこない、マケインは、ブッシュの経済プログラムの中心的原理を採用し、同じ減税を恒久化すると約束している。」
 このマケイン氏とオバマ氏の議論は、クリントン氏の陣営にとって、ベテランの公民権活動家、ジョン・ルイス氏の離脱という打撃として現れた。ルイス氏はジョージア州議員で、一貫してクリントン氏の最も著名な黒人の支持者であったが、その彼が今週オバマ氏へ支持を切り替えることを発表したのだ。「アメリカでいま起こっていることは、我々のうち一部の人間は見たことがないものである」1960年代におけるロバート・ケネディの選挙戦以来の政治的な高揚をオバマ氏が作り出しているとして、ルイス氏は言う。「私は人々の側に、歴史の精神の側に立ちたい」。
 ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏は昨日、独立した候補として立候補するかどうかの思索を打ち切り、『ニューヨーク・タイムズ』紙に、出馬はしないが、ある候補を支持するかもしれないと書いた。「私は、国民的議論を、党派性やイデオロギー、そして「サウンドバイト」のためではなく、統一と良識、そして内実の方向へと向かわせるため仕事を続ける。」(中略)
 ベテランの消費者権利のための活動家、ラルフ・ネーダー氏は、今週にも独立した大統領選挙運動を開始し、昨日はサンフランシスコ市の前職員であるマット・ゴンザレス氏がその同伴者として名乗りをあげた。
McCain in new attack on Obama over Iraq policies
The Irish Times, February 29, 2008 Friday, WORLD; Pg. 11  Denis Staunton in Cleveland, Ohio

どこでも論戦の課題は似ている、ということもあるのだが、このマケインの主張が通るなら、アジアにおける米軍の撤退如何は「在外米軍に犠牲がでてるかでてないか」にかかっているということでしかない。自ら平和を築けなければ、ここまでコケにされるということであろう。中国でもイージス艦の建造が進んでいるそうである。アメリカ共和党と日本の自民党の連中はなんとも嬉しいことだろう!
成瀬