研究をコモンズに!「野依は歴史の法廷に立つ覚悟はあるのか」

 11月25日にノーベル化学賞を取った野依良治自民党本部に招かれ、事業仕分けによって「次世代スーパーコンピューター開発費」が、「予算計上見送りに限りなく近い縮減」と、判定されことを痛烈に批判したらしい。いわく民主党は「歴史の法廷に立つ覚悟はあるのか」と。このセリフ聞いて噴出しそうになった。それはキューバのバチスタ独裁政権に抵抗して投獄されたフィデル・カストロが、裁判の最終弁論で行った名演説、「歴史は私に無罪を宣告するだろう」を思いださせたから。この演説によってカストロの評判は高まり、ついに民衆の要求によって独裁政権カストロを釈放せざるをえなくなった。理念の力によってキューバ革命を鼓舞した重要なテキストであるけど、それと不覚にも野依が一瞬かぶった。(最初読んだ時、27歳でしかも獄中でこんなもん書いたカストロは何者だと驚いた)
 野依はこの演説を知ってか知らないかわからないが、同等の理想と理念をもってこの発言を行ったかといえばノーであろう。そもそもこの次世代スーパーコンピューター開発はNEC、日立、富士通理化学研究所が共同で行われていた産学連携プロジェクトである。NEC、日立は開発費が払えず脱退し、残った2者によって継続されていた代物だが、事業仕分けの判定の後、経営上重要だったのか富士通の株式が下落したらしい。おいおい結局日本企業の利益追求のための開発に、研究費をとっておもちゃを作りたいマッド・サイエンティストが野合したプロジェクトじゃないか。産学協同研究と言えばなんでも予算が取れるからという目的ありきで、研究成果は企業によって私有化されるだけの理念なんかなにもない予算。
 あるとしたら「世界で一番のスーパーコンピュターを作る。わが国が技術開発競争で遅れをとる」というナショナリズムと企業利害むき出しの議論だけ。巨額の税金をかける一方、多くの人々の知的協働と成果は結局知的所有権として囲いこまれて、わが国の企業が国際競争力獲得し、めでたし、めでたしという話なのか!人類の福祉に役立つために研究成果をフリーライツとしてコモンズするならともかく、ネオリベと産業界に屈服する理念なきへたれた科学者たちによる茶番劇にしか見えなかった。そもそも世界1を目指すナショナルプロジェクトとか胡散臭いのを止めて、世界で共同で開発すりゃお金もかからず、より多くの人に利用され科学者冥利につきるじゃん。今のところ野依の迫真の演技が効いてかどうか予算復活が濃厚らしい。
 この勢いでGXミサイルという軍事開発がさらに復活されたら目も当てられない。そもそも各国が別々に衛星を打ち上げたり、宇宙開発を行っているのは軍需産業の利益と軍事転用したいだけ。コモンズの衛星が世界で4,5個回っているだけで、天気予報とかGPSとか人類に必要なものは全てまかなえる。お金と資源の無駄遣いのJAXAとか種子島宇宙センターを廃止して、衛星、宇宙技術は国連宇宙コモンズセンターとか作って研究してほしいよ。
とにかくナショナル・プロジェクトを復活させようとしているやつらと科学技術費を増やせというので一致できるとは思いません。そんなプロジェクトに使わず、大学予算を増やし、学費タダ、非正規雇用の職員・教員にもっと給料を上げ、首にするなと訴えます。草の根のスポーツ予算を増やせという要求が、今予算を削られたてあわてふためいているJOC日本オリンピック委員会)と共闘できないように。

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サパタ

GXミサイルの危険性
東京の杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)です。本日11月17日(火)に行われる行政刷新会議の「事業仕分け」で、宇宙航空研究開発機構JAXA)のプロジェクトである「GXロケット」が取り上げられます。第3ワーキンググループ(農水・文科・防衛/主査:蓮舫議員)が9:30から10:25にかけて扱います。
GXロケットは、自民党の「無駄遣い撲滅委員会」(河野太郎議員ら)でさえもが「開発凍結」を提案したほどの不良プロジェクトであり、「技術開発を失敗させる要素が全て盛り込まれた」(松浦晋也/ジャーナリスト)とまで言われているものです。既に開発には推定650億円の巨費が費やされ、今後も最大1,400億円強の追加投資が必要と見積もられています。トータル2,000億円超は、当初計画450億円の実に5倍近くに及ぶものです。開発中止寸前だったGXロケットは、麻生前政権の官房長官だった河村建夫衆院議員ら自民党の「国防・宇宙族」の画策によって延命してきました。彼らは、主契約者である軍需企業のIHI(旧石川島播磨重工業)の意向を受けて、安全保障の名のもとに強引に官需(=軍需!)による企業救済を行い、宇宙の軍事利用を促進しようとしたのです。民生利用で出発したはずのGXロケットに、偵察衛星など軍事衛星打ち上げを担う「安全保障ミッション」を付加させることが狙われました。2008年11月4日に開かれた「宇宙開発戦略専門調査会」(座長:寺島実郎)の会合の場で、IHIは「実証試験機の打ち上げ射場として米バンデンバーグ空軍基地を使用することにより、日米防衛分野の相互運用性の確保につながる」という趣旨の資料を配布してみせました。
【参考】宇宙基本計画(案)への反対意見[GXロケット批判]
    (ブルース・ギャグノン)
 http://www.anatakara.com/petition/comments-on-space-basic-plan.html